← わたくし、今日からお嬢様になりますわ!~お嬢様に憧れて何が悪いんですの?~(第一部完結)
第17話
田舎から弟が来ましたわ!
田舎で暮らしている弟が、都会へ遊びに来ることになりました。
数日こちらで過ごすため、我が屋敷にも泊まる予定ですの。
ですが、弟には一つ、大きな問題があります。
「姉ちゃん、まだ?」
「姉ちゃんと呼ばないでくださる?」
駅の改札前。
大きな鞄を背負った弟が、わたくしを見て固まっていました。
「……何、その格好」
「見れば分かるでしょう?」
レースとリボンをあしらったドレス。
日傘。
手袋。
どこから見ても、立派なお嬢様ですわ。
「いや、分からん」
「お姉さまとお呼びなさいな」
「嫌だ」
「なぜですの!?」
再会して一分も経たず、腹立たしいですわね!
弟は、わたくしの周囲を一周するように眺めました。
「都会に出て、何があったん?」
「何もありませんわ。わたくしは本来の姿へ戻っただけですの」
「家にいたころ、ずっと部屋着やったやん」
「昔の話を大声でしないでくださる!?」
周囲の視線が集まっています。
わたくしは咳払いをして、迎えの車へ弟を案内しました。
「車まで用意してんの?」
「お嬢様ですもの。当然ですわ」
「その喋り方、家でもやってんの?」
「わたくしは常にこの口調ですの」
「嘘つけ」
「お黙りなさい!」
車が走り出してしばらくすると、窓の外に我が屋敷が見えてきました。
整えられた庭園。
大きな門。
古くはありますが、修繕の進んだ洋館。
弟が窓へ顔を近づけます。
「……え、あれ?」
「我が屋敷ですわ」
「姉ちゃんの?」
「お姉さまですの!」
車が玄関前へ止まります。
扉を開けると、橘と小春が並んでいました。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「お帰りなさい、お嬢様」
弟の顔から、笑いが消えました。
「……ガチやん」
「最初からそう申しているでしょう?」
ふふん。
ようやく、わたくしの偉大さを理解したようですわね。
わたくしは優雅に玄関へ踏み出しました。
その瞬間、ドレスの裾を踏んで前へ転びました。
「お嬢様!」
「姉ちゃん!」
どうにか橘に支えられ、床への激突は免れます。
弟が、静かに頷きました。
「やっぱ姉ちゃんやわ」
「どういう意味ですの!?」