← わたくし、今日からお嬢様になりますわ!~お嬢様に憧れて何が悪いんですの?~(第一部完結)
第24話
お嬢様は怪談など怖くありませんわ!
夕方から降り続いた雨は、夜になってさらに強くなりました。
帰る予定だったアリサさんも、今夜は我が屋敷へ泊まることになりました。
深夜。
廊下の奥から、何かを引きずるような音が聞こえます。
ずる……ずる……。
「いま、何か聞こえませんでした?」
小春が足を止めました。
「風ですわ」
わたくしは即答しました。
「屋内ですけれど」
アリサさんが、わたくしの袖を握ります。
「ま、まさか幽霊ではありませんわよね?」
「幽霊など存在しませんの!」
そう言いながら、わたくしは小春の後ろへ移動しました。
「麗奈さん、前を歩きなさいな」
「ここは我が屋敷ですもの。最後尾から全体を見守りますの」
「怖いだけではなくて?」
「違いますわ!」
ずる……。
また音がします。
三人で、ゆっくり廊下の奥へ進みました。
「橘はどこですの?」
「見回りに出ています」
「どうして、このような日に限って!」
物音は、閉ざされた部屋の中から聞こえます。
わたくしは扉へ手をかけました。
「アリサさんが開けなさい」
「この屋敷の主人は麗奈さんでしょう?」
「お客様へ特別な体験を譲りますの」
「結構ですわ!」
仕方なく、わたくしが扉を開きました。
「きゃあああっ!」
白い影が、部屋から飛び出します。
シロでした。
「ね、猫ですの!?」
アリサさんが胸を押さえます。
「最初から分かっていましたわ」
「叫んでいましたけれど」
「驚かせないよう注意しただけですの!」
小春が部屋を確認します。
床に落ちた布を、シロが引きずって遊んでいたようです。
「もう戻りましょう」
安心して扉を閉めた、その直後。
誰もいない部屋の奥から。
こん。
小さな音が聞こえました。
三人で顔を見合わせます。
「……小春」
「はい」
「今夜は、わたくしの部屋で寝ることを許しますわ」
「お嬢様が一人で寝たくないだけですよね?」
「特別待遇ですの!」
アリサさんも、黙ってついてきました。