← わたくし、今日からお嬢様になりますわ!~お嬢様に憧れて何が悪いんですの?~(第一部完結)
第28話
お嬢様学校へ参りますわ!
お嬢様学校の公開日。
わたくしは、歴史を感じる大きな門の前に立っていました。
校舎へ続く並木道は綺麗に整えられ、行き交う生徒たちは皆、上品な制服を着ています。
「ずいぶん本格的ですのね」
「学校なのですから当然ですわ」
隣に立つアリサさんは、いつもと同じ涼しい顔。
けれど門をくぐった途端、周囲の空気が変わりました。
「ごきげんよう、九条院さん」
「ごきげんよう」
「先日の委員会では、ありがとうございました」
「いいえ。お役に立てたのでしたら何よりですわ」
「本日の発表も楽しみにしております」
「ありがとう存じます」
次から次へと生徒が挨拶していきます。
アリサさんは、一人ずつ名前を呼び、落ち着いて応じていました。
何ですの?
いつも最後のお菓子を奪い合っているアリサさんとは、まるで別人ですわ。
「麗奈さん?」
「な、何ですの?」
「先ほどから、わたくしの顔を見すぎですわ」
「学校での生態を観察していますの」
「珍しい動物のように言わないでくださる?」
そのとき、一人の生徒がこちらへ近づきました。
「九条院さん、そちらの方は?」
「こちらは一ノ瀬麗奈さんですわ」
「まあ。九条院さんのお友達?」
お友達。
その言葉を聞いた途端、別の生徒たちまで集まってきました。
「初めまして」
「とても素敵なドレスですわ」
「どちらのお家の方ですの?」
「普段は何をなさっていますの?」
一人。
二人。
気づけば、六人。
「ええ、その……わたくしは……」
質問が四方八方から飛んできます。
どれから答えればいいんですの!?
わたくしは笑顔を保ったまま、そっとアリサさんの袖を掴みました。
アリサさんが、わずかにこちらを見ます。
「皆さん」
穏やかな声でした。
「一度に尋ねては、麗奈さんがお困りになりますわ。まずは順番にご挨拶いたしましょう」
「あら、申し訳ありません」
生徒たちが素直に一歩下がります。
助かりましたわ。
「麗奈さん」
アリサさんが小声で申しました。
「問題ないのではありませんでしたの?」
「……これは想定を超えた集団戦ですわね」
「ただの会話ですわ」