← わたくし、今日からお嬢様になりますわ!~お嬢様に憧れて何が悪いんですの?~(第一部完結)
第41話
わたくしも乗りますわ!
ノアを庭で遊ばせていたとき。
小春が、その大きな背中を見ながら申しました。
「この子、私くらいなら乗れそうですね」
「犬は乗るものではありませんわ」
「少しだけですよ」
「危ないですの!」
そう言いながら、わたくしも少し興味がありました。
ノアは四本の脚でしっかり立ち、小春が背中へ手を置いても嫌がりません。
「本当に乗りますの?」
「嫌がったらすぐ降ります」
小春はゆっくり、ノアの背中へまたがりました。
ノアは驚く様子もなく、庭を歩き始めます。
「すごい。高いですね」
「ずるいですわ!」
「何がです?」
「小春ばかり乗るなんて不公平ですの!」
「さっき危ないって言ってましたよね?」
「危険がないことを確認しましたの!」
小春が降りると、わたくしはすぐノアへ近づきました。
「今度は、わたくしを乗せなさい」
「お嬢様、念のため――」
「小春が大丈夫だったのですから、わたくしも平気ですわ!」
橘の言葉を遮り、背中へまたがります。
思った以上に高い。
そして、毛が柔らかい。
「まあ! なかなかよい眺めですわね!」
ノアが振り返り、わたくしを見ました。
目が輝いています。
「何ですの?」
尻尾が大きく揺れました。
「ノア?」
次の瞬間。
ノアが走り出しました。
「ひゃああああっ!?」
小春を乗せたときは、あれほど静かに歩いていたのに。
庭を全速力で駆け回ります。
「止まりなさいな!」
「お嬢様、しっかりつかまってください!」
「つかまっていますわ!」
ノアの首へ必死にしがみつきます。
花壇の横。
噴水の周囲。
干してある洗濯物の下。
視界がものすごい速さで流れていきました。
「ノア! 落ち着きなさい!」
「わん!」
「返事ではなく止まりなさい!」
ようやく橘が進路へ入り、ノアを止めました。
わたくしは震える脚で地面へ降ります。
「……小春」
「はい」
「なぜ、あなたのときは歩いていましたの?」
「お嬢様を乗せてもらえて、嬉しかったんでしょうね」
「喜び方が激しすぎますわ!」
ノアは満足そうに、わたくしへ身体を寄せました。
嬉しかった。
そう言われると、強く叱る気にもなれません。
「次は、ゆっくり歩くんですのよ」
「わん!」
「本当に分かっていますの?」
尻尾だけは、また激しく揺れていました。