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第89話

買い物袋を持ちますわ!

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 町へ買い物に出た帰り、小春の両手には袋がいくつも下がっていました。

「持って差し上げますわ」

「大丈夫です」

「遠慮しなくてもよろしくてよ」

 麗奈は一番大きな袋を受け取りました。

 想像以上に重く、腕がすぐ下がります。

「な、何が入っていますの?」

「飲み物と洗剤です」

「なぜ一つへまとめましたの!」

「麗奈さんが持ちたいと言うので」

 麗奈は途中で何度も持ち替えました。

「休憩しませんこと?」

「屋敷まであと少しです」

「では、少し遠回りして休憩場所を探しますの」

「遠くなりますよ」

「では、ここで立ち止まりますわ!」

 小春が袋を取り返そうとします。

「やっぱり私が持ちます」

「嫌ですの。言い出したのはわたくしですもの」

 麗奈は歯を食いしばり、最後まで運びました。

 屋敷へ着くと、腕が震えています。

「よく頑張りましたね」

「当然ですわ……」

 橘が袋を確認しました。

「中の卵は?」

 麗奈と小春が固まりました。

 袋の底から、嫌な音がしました。

「……頑張り方を間違えましたわ」

 その日の夕食は、予定より多めの卵料理になりました。

 麗奈は責任を感じ、卵焼きを自分で作ろうとしました。

「わたくしが割ったのですもの。わたくしが料理しますわ」

「すでに割れていましたけど」

「細かいことはよろしいですの!」

 完成した卵焼きは形が崩れていましたが、味は悪くありませんでした。

「これも結果としては成功ですわね」

「卵を割ったところから考えれば、ぎりぎりです」

「成功ですの!」